特許明細書作成について(ストーリー作り その12)

 

 ここまで長々と、【背景技術】や、【発明の詳細な説明】を書くためのストーリー作りを説明してきました。

 

 慣れてくれば、頭の中で簡単にストーリーを組み立てるだけで、書けるようになります。

 また、慣れて無くても、簡単な構造の発明の場合には、こんなに長々とバカ丁寧にストーリー作りを考えなくても書けることがあります。

 

 しかしながら、ストーリー作りの基本を知っておいた方が良いと思います。

 発明を説明するのが複雑な場合には、どのような図を使って説明していったら良いかの判断に困ることがあります。

 単純に、全体像→構成図→フローチャートだけで、発明を説明仕切れないこともあるのです。

 そんな時に、全体像→各部の説明→動作手順の流れさえ見失わなければ、どこにどのような図面を挿入していくと分かりやすいかを整理しやすくなります。

 

 また、【発明の詳細な説明】を書くに当たって、一番気をつけなければならないのは、特許法364項の要件、“その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることが出来る程度に明確かつ十分に記載したものであること(開示要件)”と、3661号の要件、“特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること(サポート要件)”を満たしているかです。

 これらは、当たり前の事なのですが、特許明細書を作成しているときに、抜け落ちてしまうことが良くあります。

 明らかな誤記であれば、後の補正で解決出来るのですが、新規事項であるとして、新たに書き加えることが認められない場合には後の補正で解決出来ないからです。

 

 特許を取るためには、他の特許文献と比べた新規性や進歩性も重要なのですが、これは特許明細書(主に【発明の詳細な説明】と図面)に書かれている範囲で補正可能なので、後で修正が出来ます。

 最も、補正しても新規性や進歩性を回避出来ないこともありますが、これは特許明細書の書き方の問題ではなく、発明がそもそも新しく無かったことが問題になります。

 

 私は、これまでに400件以上、特許明細書を作成し、今までの所、このような開示要件やサポート要件の不備で後の補正で解決出来ない状況に陥ったことはありませんが、やはりここは丁寧にやっておいた方が良いかと思います。

 

 ストーリー作りが出来たら、次は、【発明の詳細な説明】を詳しく書いていくことにします。


特許明細書作成について(ストーリー作り その11)

 

 実施形態における各部を動作させた場合の説明では、発明を含む装置を動作させた場合の手順を示すフローチャートを用意します。

 動作が無い発明もありますから、フローチャートが必須とは言いませんが、手順を説明したい場合には、最も簡単な説明資料になり得ますので、出来るだけ用意した方がいいと思います。

 特に、複雑な制御の場合には、自分の考えの矛盾を見つけるのにも役立ちます。

 

 私が考案した発明における第1実施形態のフローチャートはこのようになりました。

 
図4

fig4

図5
fig5

 

 図4は、ナビ本体側の制御部(第1制御部)の動作フローで、図5は、ナビ本体を保持する保持部側の制御部(第2制御部)の動作フローです。

 詳しくは、詳細な説明の中で説明しますので、中身を詳しく確認する必要はありません。

 

 実は、この程度だったら、フローチャートを一つ作成せずに、文章だけでも十分に説明出来ると思います(特に図4)。

 但し、この後、外国語に翻訳して国際出願を考える場合に、フローチャートは、非常に分かりやすく発明を説明出来るツールになりますから、誤訳を回避するためにも、簡単なフローでも、面倒くさがらずにフローチャートを一つ用意することをお奨めします。


特許明細書作成について(ストーリー作り その10)

 

 構成図として、実際の商品に使われる回路図や、設計図面をコピーして使う方法もありますし、実際にそのような特許明細書を見たこともあります。

 

 特許法(具体的には、364)では、“その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることが出来る程度に明確かつ十分に記載したものであること”が必要になり、この条件を満たす限りにおいて、発明の不必要な部分を記載することは、法律的には何ら問題はありません。

 

 但し、【特許請求の範囲】に記載した発明は、通常、実際の商品よりも広い概念で権利を取りたいのですが、その総てが設計図に明確に書かれていないこともありますし、反対に、発明を説明するために重要ではない部分が書かれていたりします。

 このため、発明を説明するために必要な部位の図示を抜かしてしまうことも起こりえるので、具体的な装置の各部位を説明する構成図については、出来る限り、特許明細書作成用に図面を書き直すことをお奨めします。


特許明細書作成について(ストーリー作り その9)

 

 実施形態における各部を動作させる前の説明では、発明を含む装置における発明に関連する重要な部位を書いた構成図を用意します。

 
手書きの図

手書きの図面

 

 このような手書きの図を書きながら、発明に必要な部位を考えていきます。

 実際の図面として使わなかった絵も描かれています。

 色々と試行錯誤を繰り返していたことが分かると思います。

 

 それで最終的に出来上がった第1実施形態の構成図はこのようになりました。

 
図3(構成図)

fig3


特許明細書作成について(ストーリー作り その8)

 

 実施形態における全体像は、実際の商品の斜視図などがあれば、これを使っても結構です。

 見て分かるような構造が発明のポイントになる場合には、実際の商品を示す斜視図が発明を雄弁に物語ることになるからです。

 

 私が考案した発明の場合には、まだ商品化されたモノが無いため、自分で書いた斜視図を使って全体像を説明することにしました。


特許明細書作成について(ストーリー作り その7)

 

 実施形態における全体像としては、私の考案した発明では、図1と図2で、カーナビゲーションシステムの斜視図を用意しました。

図1

 fig1


図2
fig2

 

 通常のカーナビゲーションシステムの発明であれば、図2のように、本体10が保持部30に取り付けられた図だけで、この装置が何であるかを理解出来ると思いますが、本件発明では、本体10と、保持部30との接続にもポイントがあるため、敢えて、接続前(図1)と接続後(図2)の図を用意しました。


特許明細書作成について(ストーリー作り その6)

 

 実施形態における全体像では、発明を含む装置がどのようなモノかを説明出来る程度のモノを用意します。

 但し、装置の総てを挙げる必要はなく、最低限、その装置が何かが分かれば十分です。

 例えば、自動車のエンジンの制御に関する発明であれば、エンジンの吸気から排気に関する部分の構成を書けば十分だと思います。

 その制御が、タイヤやハンドルに影響を与えるものでなければ、これらを積極的に記載する必要はありません。

 不必要な部位を書くと、後で、何で必要だったかを思い出すのに苦労することもありますから。


特許明細書作成について(ストーリー作り その5)

 

 ストーリー作り(【発明の詳細な説明】)で、実施形態が決まると、次に、各実施形態の構成を考えます。

 

 実施形態の説明では、全体像→各部を動作させる前の説明→各部を動作させた場合の説明→効果とするのが分かりやすいと思います。

 

 全体像では、発明を含む装置の斜視図などで、かかる装置がどのようなモノかが分かるようにします。

 

 動作前の各部の説明では、装置の中で、発明に関係する部位を抽出したブロック図を用意し、各部位の機能や役割を説明します。

 

 各部を動作させた場合の説明では、フローチャートを使って、装置を(電気的にまたは機械的に)動かした場合に、どのような手順で各部が動作していくかを説明します。


特許明細書作成について(ストーリー作り その4)

 

 ストーリー作り(【発明の詳細な説明】)を、私が考案した発明で説明してみます。

 

 私の考案した発明では、車輌のバッテリーとカーナビ本体との接続が無くなるため、車輌のエンジンのオンオフ状態をどうやって知るかが重要になります。

 従来の技術では、車輌のバッテリーから電力供給のオンオフを検知すれば、車輌のエンジンのオンオフ状態を知ることが出来たので必要の無かった考えです。

 これについては、私は、本体に設けた振動検知部でエンジンのオンオフ状態を知る方法(第2実施形態)、本体から離れた所(シガーライターソケット)に流れる電流でエンジンのオンオフ状態を知る方法(第3実施形態)、及び本体から離れた所(エンジンECU)に流れる電流でエンジンのオンオフ状態を知る方法(第4実施形態)を考えつきました。

 

 第1実施形態では、太陽電池で駆動するカーナビゲーションシステムの最も簡単な形態を説明します。

 第2実施形態では、第1実施形態に、車輌のエンジンのオンオフ状態を見るために、振動検知部が本体に設けられた形態を説明します。

 第3実施形態では、振動検知部の代わりの電流検知部が、本体ではなく、本体の外部(シガーライターソケット)に設けられた形態を説明します。

 第4実施形態では、振動検知部の代わりの電流検知部が、本体ではなく、本体の外部(車輌ECU近く)に設けられた形態を説明します。

 

 これらを1つの実施形態で説明するのは難しいので、このようなエンジンのオンオフ状態を知る方法を考慮しない第1実施形態と、考慮する第2〜第4実施形態に分けて説明することにしました。


特許明細書作成について(ストーリー作り その3)

 

 ストーリー作り(【背景技術】)を、私が考案した発明で説明してみます。

 

 【背景技術】としては、以下のことが挙げられます。

 私が発明を考案した時、太陽電池で駆動するカーナビゲーションシステムはありましたが、太陽電池だけで駆動するのではなく、車輌のバッテリーからの電力による駆動との併用のものでした。

 このため、太陽電池で駆動するものの、車輌のバッテリーからの配線がゼロになった訳ではなく、配線の簡素化が出来ていませんでした。

 太陽電池で充電して得られた電力だけではカーナビゲーションシステムを駆動するのが不十分だったのかもしれません。

 この場合には、車輌のバッテリー電圧12Vまたは24Vを、カーナビゲーションシステムを駆動するのに適当な電圧(3〜5V程度)に変圧する必要があります。

 また、太陽電池とカーナビゲーションシステムとが一体になっており、上面に配置された太陽電池パネルの存在により本体が奥行き方向に大きくなっていました(分厚くなっていました)。

 

 但し、これらの総てを【背景技術】に記載する必要はなく、自らが挙げた特許文献との関係で、記載するものを整理します。

 私の場合は、太陽電池だけで駆動するカーナビゲーションシステムの特許文献を見つけられなかったので、通常のオンダッシュに取り付けられたカーナビゲーションシステムが図示された文献(特開2007-69828)を特許文献1として挙げ、車輌のバッテリーからの配線が見える点を問題点にしました。

 

 ここは否定的な意見もあるかもしれませんが、自分の発明を都合良く説明するために適当な文献を特許文献にしていいと思います。

 こんな特許文献がある→その特許文献にはこんな問題がある→だからこんな発明をしたんですという流れが書きやすいもので良いと思います。

 

 但し、審査官は、【背景技術】に書かれた内容に沿って新規性や進歩性を検討する訳でなく、【特許請求の範囲】に書かれた内容に近い特許文献を探してきますから、自分に都合良く書くだけでは不十分で、想定される特許文献との違いは、【従来技術】として書かないまでも、考慮しておく必要はあります。

 

 でも、【特許請求の範囲】の最も広い発明(大抵は請求項1の概念)が変わると、これに合わせて【背景技術】も変更する必要性が出てきますから、ラフに書いておくだけで結構です。

 この【背景技術】も、【発明の詳細な説明】を書き終わった後に修正する【特許請求の範囲】の内容に従って後ほど修正が入ります。


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