【特許請求の範囲】の書き方について (その25)

 

 【特許請求の範囲】でよく使われる表現である体言止めについて説明します。

 

 体言止めの文体は、1つの文章が長くなって読みづらいかもしれませんが、慣れましょう。

 要は、“○○部と、××部と、△△部とを備える□□装置”という書き方で、○○などの部分を修飾する説明が長いだけです。

 

 なんでこうなっているかというと、英語の表現から来てるんじゃないかと思います。

 上述の□□装置を英語で表現すると、

 

 □□ apparatus comprising:

 ○○ unit;

 ×× unit; and

 △△ unit.

 

 となり、簡潔に発明の構成を説明出来るのです。

 

 ただし、特許法上では、“前記”を使った書き方も、体言止め文体も必須要件になっている訳ではありません。

 発明を理解出来るように明確に書かれていれば、お咎めはありません。

 つまり、“前記”という表現を使っていなかったり、体言止め文体になっていないこと自体が、拒絶理由になることはありません。

 

 とはいえ、慣れれば、この方が書きやすいし、大半の特許文献はこの書き方になっていると思うので、最初は大変ですが、慣れておいた方がよろしいかと思います。


特許請求の範囲】の書き方について (その24)

 

 【特許請求の範囲】でよく使われる表現:「前記」について説明します。

 

 例えば、私が考案した発明の請求項1〜5で「前記」という表現を見てみましょう。

 

  【請求項1】

 充電可能な第1電池と、情報を出力する出力部とを有する本体部と、

 車両に固定され、前記本体部を着脱可能な状態で保持する保持部とを備え、

 前記保持部は、光、熱、風、及び振動の少なくとも1つを電気エネルギーに変換する発電部を有し、

 前記第1電池への充電は、前記車両のバッテリーに充電された電気エネルギーを使用せず、前記発電部で変換された電気エネルギーに基づいて行われ、

 前記本体部は、前記車両のバッテリーに充電された電気エネルギーを使用せず、前記発電部で変換された電気エネルギー、または前記第1電池に充電された電気エネルギーによって駆動されることを特徴とする情報出力装置。

  【請求項2】

 前記保持部を設置した車両のアクセサリ電源のオンオフ状態を検知する第1検知部と、

 前記第1検知部による検知結果を第1情報として発信する発信部とを更に備え、

 前記保持部と前記本体部の少なくとも一方は、前記発信部からの前記第1情報を受信する受信部と有し、

 前記本体部は、前記第1情報に基づいて、前記本体部のオンオフ状態を制御する制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の情報出力装置。

  【請求項3】

 前記第1検知部は、前記車両に設けられたシガーライターソケットに取り付けられ、前記シガーライターソケットへの電力供給状態を、前記アクセサリ電源のオンオフ状態として検知することを特徴とする請求項2に記載の情報出力装置。

  【請求項4】

 前記第1検知部は、前記車両に設けられたECUに接続される車速信号を検知し、

 前記発信部は、前記アクセサリ電源のオンオフ状態に関する情報と、前記車速信号に関する情報とを前記第1情報として発信することを特徴とする請求項2に記載の情報出力装置。

  【請求項5】

 前記保持部は、充電可能な第2電池を有し、

 前記第2電池への充電は、前記発電部で変換された電気エネルギーに基づいて行われ、

 前記本体部は、前記発電部で変換された電気エネルギー、前記第2電池に充電された電気エネルギー、または前記第1電池に充電された電気エネルギーによって駆動されることを特徴とする請求項1に記載の情報出力装置。

 

 なお、請求項5は、請求項1を引用していますが、請求項2〜4を引用していないので、請求項2〜4で使われた単語があったとしても、請求項5では初登場の扱いになります(ここでは具体的な例が無いのですが)。


【特許請求の範囲】の書き方について (その23)

 

 【特許請求の範囲】でよく使われる表現:「前記」について説明します。

 

 “前記”は、以前の文説の中で一度以上使われたことのある単語に付して、同じ登場人物(ヒトじゃないけど)であることを意味します。

 

 必ずしも同じ登場人物であることを明記する必要はないので、絶対に“前記”を使う必要は無いのですが、特許明細書を作成した人間にとってもわかりやすくなるので使った方がいいと思います。

 特に、作成当初は、区別がつくのですが、数年も経った後に見ると、“前記”がついていれば、前に登場した用語の引用であり、ついていなければ、初登場の用語だということが容易に判別できます。

 

 引用していない請求項に書かれている場合には、初登場と位置づけになるので、“前記”を付けてはいけません。


【特許請求の範囲】の書き方について (その22)

 

 【特許請求の範囲】でよく使われる表現について説明します。

 

 初めて【特許請求の範囲】を読む方にとっては、“前記”という表現や、体言止めで途中に句点を含まない、冗長な文体が気になるのではないでしょうか?

 

 私も、発明者時代、弁理士の方が、私の発明の特許明細書を作ってくれたのですが、【特許請求の範囲】に、なんて書いてあるのか意味が分かりませんでした(それじゃダメなんですが、若気の至りということで)。


【特許請求の範囲】の書き方について (その21)

 

 従属クレームを並べる順について説明します。

 従属クレームは、特許になりそうだなと思ったものから順に書いておくことをお勧めします。

 

 私が考案した発明で具体例を説明します。

 本体部に第1蓄電池、保持部に発電部を備える情報出力装置を最も広い概念の独立クレーム(請求項1)にしました。

 そして、その下位概念として、

(a) アクセサリ電源のオンオフ状態を検知する検知部と発信部があること

(b) 保持部に第2蓄電池があること

(c) 本体部と保持部との間の凸凹結合

(d) 本体部と保持部との間の磁気結合

(e) 振動を検知する検知部があること

を考えました。

 

 この中で、私は、(a)が、特許にしたい、特許になりそうだという判断基準の順位が高いと考え、請求項2にもっていきました。

(請求項1+2の概念は、感覚的に過去の特許文献に無さそうだし、カーナビメーカーが商品化を考えそうな仕様かなと考えたからです)

 

 (b)は、請求項2と並列の請求項5に、(c)は、請求項2と並列の請求項7に、(d)は、請求項2と並列の請求項8に、(e)は、請求項2と並列の請求項9にしました。

 

 また、その従属クレーム(請求項2)の下位概念として、

(i) シガーライターソケットの電力供給状態を検知すること

(ii) 車速信号も検知すること

を考えました。

 この中で、私は、(i)が、特許にしたい、特許になりそうだという判断基準の順位が高いと考え、請求項3にもっていきました。

 (ii)は、請求項3の並列の請求項4にしました。

 

 もし、審査において、請求項1の新規性が無いと判断された場合であっても、直列の従属クレームである請求項2と請求項3までは、審査してもらえることになります。


【特許請求の範囲】の書き方について (その20)

 

 従属クレームを並べる順について説明します。

 従属クレームは、特許になりそうだなと思ったものから順に書いておくことをお勧めします。

 

 出願するときには、十分に特許調査をしたつもりで、調査した特許文献との差異は明確に出来ているから、独立クレーム(つまり請求項1)で特許がとれると考えています。

 しかしながら、思い込みというのはあるもので、審査官などの第三者が見た場合に、特許文献との差異が明確に現れていない(特許文献に対して進歩性や新規性が無い)と判断されることも起こりえます。

 また、自らが調査で見つけられなかった新たな特許文献が発見されることもあります。

 このため、独立クレームに、従属クレームのいずれかの内容を付加する補正をしないと特許されない事態が起こりえます。

 

 それで、従属クレームをいくつか用意しておく必要があるのですが、その従属クレームを並べる順序にも少しだけ配慮が必要になります。

 

 現在の審査では、独立クレーム(請求項1)に新規性が無いと判断された場合に、直列でつながる従属クレームまでは新規性の判断をしてくれますが、もし直列でつながる従属クレームの最後を見ても新規性が無いと判断された場合には、以降のクレームは、別発明だという考えで、審査をしてくれません(新規性はあるが進歩性が無いと判断された場合には、総てのクレームについて審査してくれます)。

 

 この考え方は、シフト補正の禁止という平成18年の特許法改正で定められたことで、ちょっとややこしいのですが、ここでは、従属クレームの中で、特許される可能性が高い、最低限この範囲では特許を取りたいという優先順位が高いものを独立請求項の次に持って行った方がいいと思ってください。


【特許請求の範囲】の書き方について (その19)

 

 【特許請求の範囲】を書きながら、クレームツリーを作っておきます。

 クレームツリーは、下位概念の請求項(従属クレーム)が、どの上位クレーム(独立クレームや、他の従属クレーム)の下位に位置するかを図示するものです。

 特許出願時の提出資料ではありませんが、【特許請求の範囲】に書かれた内容を整理するのに役立ちます。

 

クレームツリー
 

 特許明細書作成時には、書かなくても分かるものですが、その後数日しただけで、忘れてしまいます。

 数年後の拒絶理由通知を受けた時に、何でこんなクレームにしたの?って思い出せないことだってありますから。


【特許請求の範囲】の書き方について (その18)

 

 【特許請求の範囲】を書く際に、512日のエントリーで書いたように、請求項が出来上がったら、その請求項に対応する効果を書いておきます。

 【特許請求の範囲】に、発明の効果を書き込む必要はないのですが、後の【課題を解決するための手段】で使います。

 もし、その効果が、【発明の詳細な説明】の実施形態でしっかりと書かれていない場合には、実施形態にも書き足していきます。


【特許請求の範囲】の書き方について (その17)

 

 独立クレームを複数用意する意味について説明します。

 

 本件発明では、本体部と保持部とを備える情報出力装置という独立クレーム(請求項1)と、同じコンセプトの、情報処理装置の保持部という独立クレーム(請求項10)を用意しました。

 

 なぜか?

 

 請求項10が特許になった場合には、請求項10の要件にあう保持部さえ特定出来れば、特許権侵害になりますが、請求項1の場合には、請求項1の要件にある本体部と保持部とを組み合わせた情報出力装置を特定する必要があります。

 本体部が、iPhoneのような、携帯電話であって、保持部をサードパーティが供給する場合には、請求項1の特許権侵害で、本体部だけを売るアップルを訴える訳にも行きませんし、保持部だけを売るサードパーティを訴える訳にも行きません。

 でも、請求項10では、保持部だけを売るような企業に対しても対応出来ます。

 

 じゃぁ、請求項10だけで良くて、請求項1は要らないやん?

 という訳ではありません。

 

 特許料のライセンス交渉では、特許権にかかる発明を利用する装置全体の*%という具合に決めるのが普通なので、出来るだけ大きな装置で特許権を持っておく方が、単価が高くなります。

 

 じゃぁ、じゃぁ、“本体部と保持部を有する情報処理装置が取り付けられた車両”と書いておけば、車の単価に対してライセンス料がもらえるんじゃないの?

 そうかもしれませんが、程度問題でしょうね。

 確かに、本件発明の場合は、車両のダッシュボードなどに設置されるから、保持部で発電が出来るのであるなど、車両に置かれた場合に特有の効果をもたらします。

 交渉次第では、それもありなのかな?


【特許請求の範囲】の書き方について (その16)

 

 下位概念の請求項は、請求項9まででおしまいですが、最後に、請求項1の内容を、保持部だけの発明に変えた請求項10を追加しました。

 

  【請求項10】

 車両に固定され、充電可能な第1電池と情報を出力する出力部とを有する情報出力装置の本体部を着脱可能な状態で保持する情報出力装置の保持部であって、

 前記保持部は、光、熱、風、及び振動の少なくとも1つを電気エネルギーに変換する発電部を有し、

 前記第1電池への充電は、前記車両のバッテリーに充電された電気エネルギーを使用せず、前記発電部で変換された電気エネルギーに基づいて行われ、

 前記本体部は、前記車両のバッテリーに充電された電気エネルギーを使用せず、前記発電部で変換された電気エネルギー、または前記第1電池に充電された電気エネルギーによって駆動されることを特徴とする情報出力装置の保持部。

 請求項1では、本体部と保持部とを組み合わせた装置(情報出力装置)の発明になりますが、請求項10は、保持部の発明になります。


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