各種制度の説明 (その59・特許権の共有)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 「特許権の共有」について説明します。

 出願人が複数居る場合(共同出願人が存在する場合)には、各人で出来ることと、共有者の同意が必要なこととがあります。

 

 特許発明の実施は、契約で別段の定めをした場合を除いて、他の共有者の同意を得ないで行うことが出来ます(732)

 「契約で別段の定めをした場合を除いて」という文言がやっかいで、「他の共有者の同意が必要」などと、契約で別段の定めをしちゃった場合には、自由な実施が制限されます。

 また、持分を放棄することは自由ですが、譲渡や質権の設定などは、他の共有者の同意が必要になります(731)

 また、専用実施権の設定や、通常実施権の許諾についても、他の共有者の同意が必要になります(733)

 

 特に、大学と企業が共同出願する場合などは、要注意です。

 大学側は、特許発明を実施することにより利益を得ることが難しい場合が多く、企業側は、特許発明を実施することにより利益を得ることが可能な場合が多いです。

 このため、利害関係が一致しなくなることがあるため、共同出願時の契約は注意が必要です。

 大学側としては、732項で、「・・・契約で別段の定めをした場合を除き・・・」とあるので、契約で合意さえ出来れば、大学への不実施補償(特許発明を実施しない代わりに企業から補償金をもらう)に関しても有効になります。

 企業側としては、特許本来の姿からすれば、共有特許は自由に実施することが可能であるはずなので、「不実施補償」を支払う契約には拒否反応を示します。

 個人的な感覚としては、共同出願は、後のトラブルの種になる場合が多いので、「特許を受ける権利」を金銭を支払って一方に譲渡してしまって単独出願出来る形にしておいた方が良いかと思いますが、そう簡単に済まないことが多いようです。


各種制度の説明 (その59・共同発明2)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 「共同発明」の説明の続きです。

 

 「共同発明」に該当する場合は、「特許を受ける権利」は、共同発明者の共有になり、定めがない限りにおいて、その持分は平等であると推定されます(民法250)

 「特許を受ける権利」の持分を第三者に譲渡する場合には、他の共有者の同意を得る必要が出てきます(333)

 特許出願は、共同で行う必要があり(38)、違反した場合には、冒認出願となり、拒絶理由や無効理由になります。

 つまり、「特許を受ける権利」の譲渡が行われない限りは、共同発明者それぞれが、共同出願人になって、特許出願を行う必要があります。

 出願後も、出願の分割(44)、出願の変更(46)、拒絶査定不服審判の請求(132)、拒絶査定不服審判の審決取消訴訟の提起(判例)などは、共同で行う必要があります。

 一方、補正書、意見書の提出、審査請求、無効審判の審決取消訴訟の提起(判例)などは、共有者の各人が行うことができます。ただし、代表者の定めがある場合には、代表者のみに限られます。

 

 というように、共有者の同意を得ないと先へ進まないシーンがいくつかあります。

 

 さらに、共同出願を行う際に、別途共同発明者間で契約を行う場合には注意が必要です。

 例えば、審査請求は、原則的に、共有者の各人が行うことが出来るのですが、契約書に、「審査請求は共有者全員の合意の下で行う」などと書いてしまった場合には、各人で審査請求を行うことが出来なくなります。

 発明を完成させた時は、お互いにハッピーであり、夢を持っているので、比較的仲良く手続きを進めることが出来ますが、数年経つと、利害関係の不一致が生じることもあり、同意を得ることが困難な状況も起こり得ます。


各種制度の説明 (その58・共同発明1)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 「共同発明」について説明します。

 「共同発明」は、二以上の自然人の実質的な協力により完成された発明を言います。

 つまり、実質的な協力者に該当しなければ、その人は発明者に該当しません。

 例えば、二人で発明を完成させた場合に、両名が実質的な協力者に該当すれば、この発明は「共同発明」になり、「共同発明」の取り扱いに縛られることになります。

 一方が実質的な協力者に該当しない場合には、この発明は、「共同発明」に該当しませんので、「共同発明」の取り扱いに縛られません。

 

 実質的な協力者でない者としては、「単なる管理者」、「単なる補助者」、「単なる後援者・委託者」などが挙げられます。

 企業で働いていた時に、上司や営業マンから、「俺も発明者に混ぜてくれ」と言われて、共同発明者に名を連ねたことがありますが、実際には、「実質的な協力者」に該当しなかったので、不味かったです。


各種制度の説明 (その57・職務発明)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 「職務発明」について説明します。

 「職務発明」とは、使用者等の業務範囲に属し、発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明で、従業者等が「職務発明」について特許を受けた時に、使用者等がその特許権について通常実施権を有することを規定します(351)

 従業員等がした発明は総て「職務発明」に属する訳ではなく、上述の要件を満たす場合に限り「職務発明」に該当します。

 そして、「職務発明」に該当しない発明(自由発明)については、予め特許を受ける権利を使用者等に承継する契約があったとしてもかかる契約は認められません(352)

 また、「職務発明」を使用者等に承継した場合等には、従業者等は相当の対価を受ける権利を有します(353)

 

 「職務発明」で使用者等と従業者等が揉めるのは、「職務発明」に該当するかどうか(例えば、業務範囲に属するか否かなど)、対価の額に満足出来ない場合などが挙げられます。

 

 詳しくは、職務発明制度の概要や、職務発明制度に関するQ&Aをご覧下さい。


各種制度の説明 (その56・特許を受ける権利)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 「特許を受ける権利」について説明します。

 発明者は、発明をすることにより、「特許を受ける権利」を取得します。

 「特許を受ける権利」は、特許出願人に成り得る権利と言った方が分かりやすいでしょうか。

 発明者は、自然人のみで、法人は発明者には成り得ません。

 従って、法人は、発明者から譲渡により「特許を受ける権利」を取得することになります。

 つまり、「特許を受ける権利」は移転が可能な権利です。

 

 この辺は、当たり前の事に聞こえるかもしれませんが、職務発明の規定や、契約などで、発明者から法人への譲渡が成立したかどうかによって、「特許を受ける権利」が発明者に帰属するのか法人に帰属するのかが変わってきます。

 

 また、複数人の関与で発明が完成した場合に、共同発明に該当するか否かによって、「特許を受ける権利」が誰に帰属するかも変わってきます。

 

 「特許を受ける権利」を取得しない状態で出願した場合には、冒認出願となって、拒絶理由や無効理由になります。

 

 なお、「特許を受ける権利」は、質権や抵当権の目的にすることは出来ませんが、譲渡担保の目的にすることは可能です。


各種制度の説明 (その55・新規性喪失の例外)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 20091115日のエントリーで新規性(291)について、20091116日のエントリーで進歩性(292)について説明しました。

 出願日よりも前に、本件発明の内容を守秘義務の無い第三者に開示してしまうと、新規性を喪失することになります。

 良くある話に、パブリシティなどで新製品を発表したら好評だったから、この新製品に含まれる技術について特許出願したいという問い合わせがあります。

 パブリシティで、一般に発明の内容を公開してしまっていますから、この時点で新規性は無くなっており、特許性は無くなります。

 パブリシティによる新規性喪失の事実を隠して特許出願し、審査でばれなければ特許になる可能性もありますが、非常に不安定な権利を持ち続けることになりお奨め出来ません。

 アメリカでは、グレースピリオドの規定35 U.S.C. 102(b)で、出願前の1年間の出願人(発明者)の行為が新規性を喪失させませんが、日本を含む他の国では、原則新規性を喪失します。

 

 そして、新規性喪失の例外規定(30)で、一定条件下で、新規性を喪失しなかったものとしてみなされます。

 なお、出願日が遡及する訳ではなく、新規性を喪失する行為が無かったものとして扱われるだけなので、注意が必要です。

 かかる一定条件は、例えば、試験による公知、刊行物発表による公知などが挙げられます。

 詳しくは、よくある質問:新規性喪失の例外の適用について をご覧下さい。

 

 前述のパブリシティも刊行物発表に該当すれば新規性喪失の例外適用を受けられます。

 

 ただし、この要件を満たすケースはあまり多くありませんし、各国でこの要件はバラバラです。

 「日本では新規性喪失の例外が適用されたけど、中国では適用されなかった」なんてことも起こり得ます。

 このため、あまりこの制度を活用するのはお奨めしません。

 出来る限り、新規性喪失になるような行為を避けて、特許出願を行うのが良いと思います。


各種制度の説明 (その17・外国出願−11)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 外国出願をする場合の一般的な制度を説明してきましたが、実践ではどうでしょうか?

 もし、外国出願の実践的な面について知りたいという方が多ければ、先日、僕が出願した案件について、外国出願もチャレンジしてみようかと考えています。

 ただ、外国出願する場合には、必ず現地代理人(現地の特許事務所)を経由する必要があり、ある程度の費用がかかるので、たくさんの国に出願する訳にもいきませんが、数カ国はやってみて情報提供出来ればと考えています。

 

 もし、要望などがあれば、遠慮なくメールしてください(nonata□mopera.net、□にアットマークを入れてください)。


各種制度の説明 (その16・外国出願−10)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 ここまで、外国出願をする場合の制度的なものを簡単に説明してきました。

 話したいことは山ほどあるのですが、出来るだけ全体像が分かるようにと考え、法律用語を使わずに、出来るだけ経験上知った情報に基づいて説明してきました。

 このため、法律用語としては不適切な表現があるかもしれませんし、状況次第では正しくない説明が混じっているかもしれませんがご容赦ください。

 少なくとも、弁理士を目指すような方は、この程度の知識では足りませんので、別途勉強してくださいね。

 

 それで、分からない点とか、具体的な事例にそって知りたいことがありましたら、遠慮なくメールしてください(nonata□mopera.net、□にアットマークを入れてください)。


各種制度の説明 (その15・外国出願−9)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 外国出願にPCTルートを使うメリット・ディメリットについて説明します。

 

 ○:出願する国の数が多い場合(5カ国以上か?)には、前のエントリーで説明したパリ優先権ルートよりも費用が安くなることが多い。

 ×:国際出願という手続きを経て、間接的に外国の特許庁に出願書類が渡るので権利化されるまでの期間が比較的長い。

 ×:外国語の特許明細書を作成する場合に、基礎出願の内容の翻訳(直訳)に縛られる。

 ○:基礎出願の日から1年以内に外国出願をするかどうかを決定する必要があるが、具体的な国の指定や翻訳文の提出は基礎出願の日から30ヶ月後まで待てる。

 ○:国際出願を行う時点(つまり、基礎出願の日から1年後くらい)で、外国語の特許明細書を作成する費用がかからない。すなわち、初期段階での費用が比較的やすく済む。

 ○:国内段階への移行手続きの前に、国際調査や国際予備審査で、先行技術文献の有無、特許性の有無のある程度の見解を得られる。


各種制度の説明 (その14・外国出願−8)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 PCTルートを使って行う外国出願について説明します。

 

 特許の法律用語として適切か分かりませんが、出来るだけ分かりやすく説明することを目的として、説明していきますと、PCTルートは、日本国内にした基礎出願に基づいて、基礎出願の日から1年以内に、優先権主張をしながら、国際出願手続きを行い、その後、基礎出願の日から30ヶ月以内に、権利を取得したい国への移行手続きを行うやり方です。

 PCTルートを使った国際出願をした時点で、指定国(現在はPCT加盟国の総て全指定)に特許出願をしたことになります(後で、国内移行手続きとか現地語の翻訳文を提出しないと取り下げられたものとみなされますが)。

 

 国際出願は日本語でも出来ますから、国際出願手続きの時点では、翻訳文を用意する必要がありません。

 優先権主張の効果は、パリ優先権ルートを使った外国出願の場合とほぼ同じです。

 

 国際出願の場合は、国際調査とか、国際予備審査といって、先行技術の有無とか、特許性の有無についてある程度の見解書をもらえるので、国内移行手続きを行うべきかどうかを考え直すことが出来ます。


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