そもそも特許出願すべきなの? (その2)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 ここまで、特許出願(特許申請)をやることを前提にお話してきましたが、そもそも特許出願をするべきなのかの検討(その2)についてお話してみたいと思います。

 

 (1)特許出願したら、商品に「特許出願済」とか、「特許出願中」とか書けます。

 内容はともかくとして、第三者に対して、自分が特許出願したことをアピールすることができます。

 ちなみに、「特許出願済」であることを商品に添付することは法律で義務化されていることではありません。

 (2)出願日から1年半後に出願内容が公開されることにより、同等の内容の発明を第三者がその後に特許にすることを防止出来ます。

 (3)拒絶理由を覆し、権利化できれば(特許されれば)、特許権者になり、発明を独占排他的に実施する権利を得ます(特許権を侵害する第三者に対して、差止請求や損害賠償請求が可能になります)。

 (4)また、特許権者は、第三者にライセンス(専用実施権、または通常実施権)を付与することにより、そのライセンス料を収入とすることも可能になります。

 

 (1)(2)までを目的とするならば、特に深く考えることなく、特許出願の作業を進めるのがいいでしょう。

 特許出願することにより、それらの目的は確実に達成出来るからです。

 

 でも、(3)や(4)を目的とするならば、特許性(特許になりそうかどうか)、自社や他社がその発明を利用する可能性(ここでは発明の利用可能性とします、そんなの法律用語でも何でもなく、私の造語です)をよく考える必要があります。


そもそも特許出願すべきなの? (その1)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 ここまで、特許出願(特許申請)をやることを前提にお話してきましたが、そもそも特許出願をするべきなのかの検討(その1)についてお話してみたいと思います。

 

 特許出願をするためには、お金と時間がかかります。

 このブログを見に来る方の何人かは、特許事務所を経由せずに、独力で特許出願をしようとされているとおもいますが、これによって、特許事務所に払うべき費用が完全に削減出来る訳ではありません。

 企業だと対外的に支払う費用(ここでは特許事務所に支払う費用)が削減出来たと言って、喜ぶ方も居るかもしれませんが、社内の誰かに、他の仕事をやる時間を割いて、特許法の知識を蓄えさせ、特許明細書を書くためのテクニックを磨かせる訳で、見えないお金の消費があるはずです。

 たいていの場合、企業の方が、福利厚生施設などが充実しているので、高い給料の企業社員に通常業務時間を割いて、特許明細書を書かせた場合、特許事務所に支払うのと同等の費用を稼ぎ損なったと考えることも出来ます。

 

 従って、特許事務所を経由する場合にも、社内で内製する場合にもある程度のお金と時間がかかると思った方がいいでしょう。

 特許出願から、拒絶理由応答、特許料納付までを考えると、多分、お金に換算したら50〜100万円/件の費用がかかっているのではないでしょうか?

 

 そのお金(または時間)を費やす価値があるのでしょうか?


各種制度の説明 (その17・外国出願−11)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 外国出願をする場合の一般的な制度を説明してきましたが、実践ではどうでしょうか?

 もし、外国出願の実践的な面について知りたいという方が多ければ、先日、僕が出願した案件について、外国出願もチャレンジしてみようかと考えています。

 ただ、外国出願する場合には、必ず現地代理人(現地の特許事務所)を経由する必要があり、ある程度の費用がかかるので、たくさんの国に出願する訳にもいきませんが、数カ国はやってみて情報提供出来ればと考えています。

 

 もし、要望などがあれば、遠慮なくメールしてください(nonata□mopera.net、□にアットマークを入れてください)。


各種制度の説明 (その16・外国出願−10)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 ここまで、外国出願をする場合の制度的なものを簡単に説明してきました。

 話したいことは山ほどあるのですが、出来るだけ全体像が分かるようにと考え、法律用語を使わずに、出来るだけ経験上知った情報に基づいて説明してきました。

 このため、法律用語としては不適切な表現があるかもしれませんし、状況次第では正しくない説明が混じっているかもしれませんがご容赦ください。

 少なくとも、弁理士を目指すような方は、この程度の知識では足りませんので、別途勉強してくださいね。

 

 それで、分からない点とか、具体的な事例にそって知りたいことがありましたら、遠慮なくメールしてください(nonata□mopera.net、□にアットマークを入れてください)。


各種制度の説明 (その15・外国出願−9)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 外国出願にPCTルートを使うメリット・ディメリットについて説明します。

 

 ○:出願する国の数が多い場合(5カ国以上か?)には、前のエントリーで説明したパリ優先権ルートよりも費用が安くなることが多い。

 ×:国際出願という手続きを経て、間接的に外国の特許庁に出願書類が渡るので権利化されるまでの期間が比較的長い。

 ×:外国語の特許明細書を作成する場合に、基礎出願の内容の翻訳(直訳)に縛られる。

 ○:基礎出願の日から1年以内に外国出願をするかどうかを決定する必要があるが、具体的な国の指定や翻訳文の提出は基礎出願の日から30ヶ月後まで待てる。

 ○:国際出願を行う時点(つまり、基礎出願の日から1年後くらい)で、外国語の特許明細書を作成する費用がかからない。すなわち、初期段階での費用が比較的やすく済む。

 ○:国内段階への移行手続きの前に、国際調査や国際予備審査で、先行技術文献の有無、特許性の有無のある程度の見解を得られる。


各種制度の説明 (その14・外国出願−8)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 PCTルートを使って行う外国出願について説明します。

 

 特許の法律用語として適切か分かりませんが、出来るだけ分かりやすく説明することを目的として、説明していきますと、PCTルートは、日本国内にした基礎出願に基づいて、基礎出願の日から1年以内に、優先権主張をしながら、国際出願手続きを行い、その後、基礎出願の日から30ヶ月以内に、権利を取得したい国への移行手続きを行うやり方です。

 PCTルートを使った国際出願をした時点で、指定国(現在はPCT加盟国の総て全指定)に特許出願をしたことになります(後で、国内移行手続きとか現地語の翻訳文を提出しないと取り下げられたものとみなされますが)。

 

 国際出願は日本語でも出来ますから、国際出願手続きの時点では、翻訳文を用意する必要がありません。

 優先権主張の効果は、パリ優先権ルートを使った外国出願の場合とほぼ同じです。

 

 国際出願の場合は、国際調査とか、国際予備審査といって、先行技術の有無とか、特許性の有無についてある程度の見解書をもらえるので、国内移行手続きを行うべきかどうかを考え直すことが出来ます。


各種制度の説明 (その13・外国出願−7)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 昨日のエントリーで説明した、パリ優先権ルートを使った外国出願のメリットの○☆部分について補足説明します(経験談編その3)。

 

 日本語の特許明細書を書いた人が、英語の特許明細書を作成するメリットは、昨日までにお話したように、日本語の特許明細書の内容を誤解・誤訳の無いように確実に外国語(英語)で表現すること以外にもあります。

 

 それは、日本語の特許明細書の内容が単純明快に書けるようになることです。

 多分、このブログを読んでいるかたは、日本語が堪能なネイティブだと思うのですが、そのような方は、長ったらしい日本語を書いても読んでも苦になりません。

 このため、日本語の特許明細書を作成するときに、技術的な条件を書きすぎて、長ったらしい文章を書いてしまう傾向があります(僕もそうでした)。

 でも、長ったらしい文章は、主語と述語の関係が不明確で、何通りも解釈出来てしまう可能性が出てきます。

 そんな長ったらしい文章で出来た日本語の特許明細書に基づいて、基礎出願から数ヶ月後に英語の特許明細書を作成する場合に、自分で書いた日本語特許明細書なのに、英語で表現出来ないという屈辱を味わうことになります。

 そのため、次回からは、日本語の特許明細書作成時に、英語だったらなんて表現しようかと考え、単純に書こうと努力するようになります。


各種制度の説明 (その12・外国出願−6)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 昨日のエントリーで説明した、パリ優先権ルートを使った外国出願のメリットの○☆部分について補足説明します(経験談編その2)。

 

 昨日や今日、説明している所(○☆の内容)は、日本語の特許明細書と、外国語(例えば英語)の特許明細書を一人で作成するような弁理士でないと気がつかないかもしれません。

 たいていの特許事務所は、日本語の特許明細書を作成する方と、英語の特許明細書を作成する方とが別々になっています。

 ある程度、日本語の特許明細書を作る方と、英語の特許明細書を作成する方とのコミュニケーションがとれていればマシにはなるのですが、それでも一つ一つ単語の意味を聞いていく訳にもいかないので、完璧とは言えません。

 それに、この場合、英語の特許明細書を作成する方は、たいていの場合英語力があって、どんな日本語でも直訳出来てしまうので、現地代理人が誤解しないかどうかまで気がつかないで英語の特許明細書が出来てしまうかもしれません。

 

 ここは、決して手前味噌で、私に仕事を依頼しなさいと言っている訳ではないのですが、外国出願まで視野に入れる場合には、日本語の特許明細書と英語の特許明細書を一人の人間で作成出来る体制づくりは出来た方がいいと思います。


各種制度の説明 (その11・外国出願−5)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 昨日のエントリーで説明した、パリ優先権ルートを使った外国出願のメリットの○☆部分について補足説明します(経験談編その1)。

 

 私は、外国から日本へPCTルートを使った出願の翻訳文の作成をしたことがありますが、英語独特の表現で、英語的には理解出来るけど、日本語としては???な文章に出くわすことがよくあります。

 意訳しすぎると、原文に忠実な翻訳文でなくなってしまう可能性があり、かといって直訳だと何を言っているのかよく分からない状況です。

 経験的な勘で直訳と意訳の中間的な表現でごまかすのですが、なかなか苦しい所があります。

 

 また、日本から外国(米国、中国、韓国など)にパリルートを使った出願をする場合、私は日本語の特許明細書(基礎出願)と英語の特許明細書とを作成します。

 英語の特許明細書を作成するときに、約1年前に作成した日本語の基礎出願の特許明細書を読み返すのですが、誤字脱字は当然あります(あってはいけないんだけど人間だから仕方ないとここは開き直りましょう)。

 誤字脱字は致命的ではないのですが、日本語をそのまま英語に翻訳しただけでは、意味が伝わらないだろうなぁと思われることもよくあり、表現を変えたり、英語として分かるような文章を追加したりもします。

 また、請求項の内容が必ず図示されていなければならない米国の特許法に合わせて図面を追加したりすることもあります。

 また、私は中国語や韓国語が少し分かるのですが、現地の代理人による日本語(又は英語)から現地語の特許明細書作成時の誤訳の可能性を減らすためには、誤解を受けそうな表現を極力なくすような日本語や英語の特許明細書を作成する必要性に迫られます。

 韓国語は日本語と文法や語順がかなり似通っていて誤訳の可能性は比較的少ないですが、中国語はそうはいきません。

 中国語への誤訳の問題はよく言われることで、現地の代理人(ここでは中国の代理人)の現地語の特許明細書作成能力(翻訳能力)を問題視する方が多いように思えますが、私は、日本語や英語の特許明細書の内容が明確でないために誤訳が起きることの方が多いと思っています。

 このようなことを高い自由度で出来るのはパリ優先権ルートを使った外国出願だと思います。


各種制度の説明 (その10・外国出願−4)

 

 「特許申請やってみる」では、私の弁理士経験をもとに、特許明細書を発明者や知財担当者が自作する(企業で内製化する)ことを支援するための情報を提供しています。

 

 昨日のエントリーで説明した、パリ優先権ルートを使った外国出願のメリットの○☆部分について補足説明します(一般論編)。

 

 パリ優先権ルートを使って、外国語の特許明細書を作成する場合は、日本語で作成した基礎出願の特許明細書の内容と同じものを外国語で作成する訳ですが、直訳に縛られる訳ではなく、意味が同じであれば、意訳もいいし、さらに別の表現を加えることも出来ます。

 例えば、日本語では、主語が無い文章でも何となく理解出来ますが、英語や中国語では主語が無いと何を言っているのか分からない言語もあり、直訳だけでは、意味が通じないことがあります(日本語の特許明細書を書く段階で、そういう問題に気を付けて書けばいいのですが、意識していても抜けることがあります)。

 また、日本語の単語にぴったり合う外国語が存在しないこともあり、直訳だけではどうしても表現しきれないことがあり、誤解が無いように説明するためには、別の表現も書き加えた方がいいこともあります。

 後日説明するPCTルートを使った外国出願では、(PCT出願したときの特許明細書の)原文の翻訳文を各国の特許庁に提出する必要があるため、原文に忠実な翻訳が求められ、原文から逸脱するような内容を書き加えることが出来ません(経験上、ある程度はOKのようですが、訴訟などの後で争点になってしまう可能性もあるので、あまり思い切った表現の付け足しはしない方が賢明です)。


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